結局、バダハリの騒動でうやむやになったけど、今回、3連覇中だったセーム・シュルトがトーナメントに残れなかったことで、他の選手にもトーナメント制覇のチャンスが出てくるな、と思っていた。
何しろ、セーム・シュルトには、K-1という枠内では穴がない。
長身から繰り出される長いジャブと正拳、前蹴り。
近づけば必殺のヒザ。遠く離れても、マーク・ハントをKOした強力な後ろ回し蹴りという武器も持っている。
相手からすると、なんとか近づいても危険だし、長身ゆえに顔面への攻撃をクリーンヒットさせるのは至難の業。
そのシュルトに対し、アーツは対戦を自ら直訴したんだそうだ。
動画を見てほしい。2006年でのGPで、アーツは常に前に出るファイトで、シュルトを抑え込んでいた。アーツ対シュルトの戦績は、2008年の9月の試合までは1対2でシュルトが勝ち越しているが、アーツはシュルトを抑え込み、下がらせること自体には成功している。
これでピーターは、シュルト攻略法をつかんだんだと思う。
「倒せなくても、常にパンチとローで前に出て、前蹴りを出させない距離で、ひざをもらわずに押し続ければ判定で勝てる」と。
それで怪我をしやすいトーナメントではなくワンマッチなら判定で勝てる、と踏んでいたんだと思う。
ベテランで、しかもシュルトの巨体を押しこめる圧力があるピーター・アーツという選手だからこそ、ワンマッチでなら勝てた、ということなんだよね。
他の選手なら押し込めないし、押しこんでもひざをもらってKOされてる。
おそらく谷川さんも、ピーターと同じことを考えたんだろう。トーナメントの前の試合でシュルトとの試合を組んで、シュルトをトーナメントから排除しよう、と考えたんじゃないだろうか。
このトーナメントは、はっきり言ってバダ・ハリのために組まれたようなトーナメントだったように見えた。
今の、腰を痛めて以降スピードに衰えが見えているアーツとバダ・ハリなら、どう見てもバダ・ハリが勝つ。アーツが全盛期のようにハリを倒せるとは思えない。
そして、エロール・ジマーマンやエヴェルトン・テイシェイラは、まだK-1の本当のトップ選手と戦って勝ったことがない。(ジマーマンはグラウベ・フェイトーザと戦って勝っているけど、フェイトーザはどうも衰えが見えるし。)
どっちが上がってきても、バダ・ハリが勝ちそう。
そして、反対側のパートから上がってくるのは、おそらくレミーかルスランだが、もしどちらが上がってきても、大きなダメージを負っているだろう・・・
なんて谷川さんの思惑があったように見えるのは、僕だけだろうか?
ただ、そうやって組まれたトーナメントで、何が起こったか?
おそらく、バダ・ハリも今回は自分の優勝を、運営者側が期待している、というのは分かっていただろう。
甘やかされた選手が、自分は何をやっても許される、と思ってあんな結果になった、と言えなくもない。
シュルトが上がってきて、バダ・ハリをたたきのめしていれば、盛り上がりはしなかっただろうが、正当な試合がみれてまだすっきりしたような気がするのはおれだけか?
おそらく、シュルトとバダ・ハリがやったら、シュルトが勝つと思う。バダ・ハリは、リーチとスピードを生かしたカウンターが強い選手であり、自分よりリーチが長いシュルトにはその武器が生かせないからだ。
運営者側の思惑が入ったマッチメークにより、このトーナメントの失敗は起こったような気がしないでもない。
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